今回は倒立フォーク(インナーロッド式=カートリッジ式)のオイル交換に挑戦してみましたので手順や注意点などを解説していきます。
が、かなり作業が大変な上に注意点も非常に多く、尚且特殊工具が必要であったりなので基本的には自分で整備するのはおすすめしません・・・
特殊工具を揃えるだけでも普通にお店に頼んだときの工賃以上の価格になってしまうので、普通にお店に頼むのがおすすめです。
倒立フォーク(インナーロッド式=カートリッジ式)のオイル交換を解説していくが、基本的にはお店に頼むのがおすすめです
今回自分で倒立フォークのオイル交換をしてみたわけですが、実際にやってわかりましたがこれは個人でやる整備の範疇を超えてますね。
そもそも倒立フォーク、というかインナーロッド式(=カートリッジ式)の整備はフローティングバルブ式のフロントフォークに比べて構造が複雑なため、技術のある専門店や信頼しているバイクショップなどに任すのが吉です。
倒立フォークに限らず最近の大型バイクとかは正立フォークであってもインナーロッド式ですので一緒なんですが。
ざっくりと、お店に任したほうがいい理由は以下の通りになります。
- 各部を規定値に調整するためにサービスマニュアルは必須である
- 必要な特殊工具の数が非常に多い
- 特殊工具を揃えたら結局お店の工賃を超える
- 作業に最低二人欲しい。用意する工具によっては一人じゃ無理です。
- エア抜きに経験と技術を要する
必要なもの:特殊工具多いですが、確実に作業するためにもしっかり用意してください
特殊工具が非常に多いですが、無いとできないものや作業性を著しく悪くするものも多いので、基本的には全部揃えてください。(私は下調べが足りず無くて「非常に」苦労しました)
トルクレンチ
もはや言わずもがな。
フォークオイル
フォークオイルですね。指定の粘度のものを選びましょう。
ちなみに、ヤマハのFZ1の場合は、サスペンションオイル01が指定です。
フォークスプリングコンプレッサー・フロントフォークコンプレッサー
フォークスプリングを縮めるのに使います。
上の写真はヤマハ純正品のスプリングコンプレッサー。人力で縮めるのですが・・・後で画像で出てきますが一般人より筋力のある私でさえ、体重をのせてやっと縮めることができたので、普通の人なら二人、もしくは三人でやるのが確実でしょう。
こういうタイプだと一人でも大丈夫そうですね。
ただ、めっちゃ高いですorz。
このタイプだと次のダンパーロッドホルダーはおそらく不要です。
ダンパーロッドホルダー
フォークスプリングを縮めたあと、ロッドホルダーとの間にかまし固定するものです。
写真はヤマハ純正品です。
人力でスプリングを縮める場合はこれがないと作業できません。
ダンパーロッドプーラー・ダンピングロッドツール
フォークを組み立てるときに、ロッドホルダーを引っ張り上げるために使います。
これがないと組み立てることができません。
オイルシールプーラー
オイルシールを外すのに使います。
オイルシールは想像を絶する硬さです。絶対に用意してください。
私は用意してなかったので取り外すのに数時間かかりました。
また、ドライバーなどで頑張って取れたとしても、パイプの内側を傷つけてオイル漏れの原因になったら本末転倒ですので、いずれにせよ絶対に用意してください。
オイルシールプッシャー
オイルシールを圧入するのに使います。
シールに中途半端に角度がついてしまうとこれまたオイル漏れの原因になるのでこちらもちゃんと用意しましょう。
あると非常に楽にシールを入れることができます。
油面調節ツール
フォークオイルの油面を調整するのに使います。
黙って用意してください。
新品のシール類(オイルシール、ダストシール、Oリング)
シール類は全部新品にしてください。
カスタム虎の穴 4 サスペンション 構造編
基本的な知識をさらうのにおすすめです。
そして、インナーロッド式のフロントフォークのオイル交換を素人がやるのはおすすめしていません。私も全くもって同意見です笑。
サービスマニュアル
最後はサービスマニュアルですね。
様々な場所で既定値の確認が必要ですので、絶対に用意してください。
フロントフォークの取り外しまで
まずはフロントフォークを車体から取り外します。
フロントフォークを取り外すにはホイールも外す必要があるのですが、そちらについてはこの記事では省略します。(後日別記事で解説予定ですのでリンク貼っときます)
フロントフォークを外すには、フロント部分が丸々なくなるのでフロントスタンド、ジャッキアップ、吊り下げのいずれかの方法により車体前部を浮かす必要があるのですが、大きなトルクがかかっている箇所も多いので、それらについてはフロントタイヤが地面についた状態で先に緩めておきましょう。
ホイール周りですと、ブレーキキャリパーとフロントフェンダーは先に取り外しといたほうが良いと思います。後はホイールはアクスルシャフト周りのボルトナットを緩めておきましょう。
フロントフォーク周りについては上記3つを緩めておきます。
緩める順番が重要で、写真のように
- トップブリッジの割締めボルト、ハンドルクランプ(セパハンなど)
- キャップボルト
- アンダーブラケット
の順番で緩めましょう。
キャップボルトを緩める前にトップブリッジ・ハンドルクランプのボルトを緩めるのは、それらが締まっている状態だとアウターパイプは微妙に歪みが生じており、その状態でキャップボルトを緩めるとフォークに変に力がかかってしまうからです。
プリロード調整がある場合は最弱にしておきましょう。(元の設定もメモっておくように)
締まった状態にしておくと中のスプリングが縮まってることになるので、キャップボルトを外した際に勢いよくスプリングが伸びてしまう可能性があります。
また、フロントフォークの固定位置(突き出し量)や左右どちらか、向きなども後から元に戻せるように必ずメモやマーキングしておきましょう。
各種ボルトを緩めたら、車体を浮かして分解していきましょう。
今回はジャッキを使用しています。ジャッキをかける場所は基本フレームやエンジンなどで。
私はジャッキをかける場所が無いのでエキゾーストパイプにかけていますが、これは本来はやってはいけない行為です。真似しないでください。
FZ1の場合はアクスルシャフトが片側割り締めタイプですので左右を間違えることはありませんが、そういう点もチェックしておくといいでしょう。
あとはブラケットの向きでも左右判断はできますね。
フロントフォークを抜くときは回しながら抜くと抜きやすいです。
取り外し完了です。
取り外されたフロントフォークです。
分解からオイル排出まで:ホコリ厳禁!
ここから分解していきますが、ホコリ厳禁です!精密なパーツになるので、異物の混入には本当に気をつかってください。
ばらした部品を置く場合、ホコリをしっかり落とした新聞紙などが油も吸ってくれるのでおすすめです。
ばらした後は上からも新聞紙をかけ、ホコリの立ちやすい足元ではなく高い位置が尚グッドです。
また、各種パーツを拭いたりするのも厳禁です!ホコリがつく原因になります!
とにかく、異物の混入に気を使ってください!
というわけで分解していきます。
キャップボルトを外したらスペーサーが出てくるので、フォークスプリングコンプレッサーを取り付けます。
一般人よりも筋力は確実にある私がこんな全力で体重をかけて押し下げてるので、スプリングがいかに硬いかが伝わってください。(というか、こんな不安定な荷重のかけ方はしてはいけません!あまりに硬すぎて苦肉の策でした。)
一人じゃ絶対に無理です!フロントフォークコンプレッサーがあれば一応一人でも可能かもしれません^^;
この方の場合は、コンプレッサーにベルトをかけることでスプリングを縮めてますね。(他にも自作工具を作ったりしてる方も見受けられます)
こういう方法のほうが安全且つ確実だと思います。私の体重全掛けは不安定なので論外です笑。
スプリングを押し下げて、ロッドホルダーをかまします。
キャップボルトを固定してるナットを緩めて、キャップボルトを取り外します。
そのままスプリングを戻し、スペーサーなどを外すとスプリングが顔を出します。
取り出しておきます。
ここで重要なのは、スプリングやカラーには上下があるものが多いので、各部品の向きや順番が後からわかるようにしてください!
仮に向きが無くとも、部品同士の当たりがあるので、元通りに組み上げられるようにしてください。
スプリングを取り出したら中のオイルを抜いていきます。
ちょっと緑っぽい色がついてますね。
ちなみに反対側のフォークオイルについては結構汚れてました。
フォークだいたい抜き終わったら、中のダンパーロッドを何回もストロークさせて中のオイルを極力抜くようにしましょう。
だいたい抜けたら、逆さまにして1時間ぐらい放置してしっかりオイルを抜きましょう!
先程も書きましたが、拭いたりするのも厳禁です!ホコリがつくかもしれませんので!
とりあえず全部分解したらこのような感じになります。
※今回はダンパーユニットの分解は省略しています
本当に完全にオイルを抜く場合、フォーク下部にあるダンパーロッドアッセンブリーボルトを外し中のダンパーユニットを取り外さないといけません。
今回はこの作業は省略しています。
シール類(オイルシール、ダストシール、Oリング)の交換:必ず新品にしてください
次はシール類の交換をしていきます。全部新品に交換してください。
まずは一番外側についているダストシールですね。
パイプを傷つけないようにしてください。
これを取り出すとオイルシールクリップが顔を出します。
簡単にとれます。
クリップの次はオイルシールなのですが・・・これが本当にびっくりするほど硬いです。
スプリングを縮めるよりも外すのが大変でした。
オイルシール用の特殊工具なども存在するので、絶対に用意しておいたほうがいいです!
私は用意していなかったので手持ちの工具でなんとか外しましたが、下手したらパイプの内側を傷つけオイル漏れの原因になるかもしれないので、こういったやり方は絶対に駄目です!
なんとか取れました。とにかくパイプを傷つけないように気を使って格闘していたので、これを外すだけで数時間かかりましたorz。
オイルシールの奥にはワッシャーがあります。
新しいオイルシール・ダストシールの内側にはラバーグリスを塗りましょう。
インナーパイプの表面にはフォークオイルで潤滑、また、インナーパイプの端は鋭利になってるので、プラ製の薄いビニール袋(プラ製のビニールってのもおかしいですが、伝わってください笑)などを被してシール類が傷つかないようにしましょう。
シールの取り扱いには本当に気を使ってください。オイル漏れの原因になります。
今回は、ダストシール、シールクリップ、オイルシール、ワッシャーの順番です。
オイルシールには向きがあるのでそちらも間違えないようにしっかり確認しておいてください。
アウターパイプを差し込み、オイルシールプッシャーでシールを圧入します。
しっかり奥まで入ったらシールクリップを入れることができます。
シールクリップの溝がしっかり見えてるかどうかで入ったかを確認するといいでしょう。
同様にダストシールも取り付けます。
ダストシールは写真のように金属製の工具のみで問題ありません。
全て取り付けることができました。
新品のシールは見てて気持ちいいですね。
最後はキャップボルトのOリングです。こちらも必ず新品に交換してください。
オイル注入
次はオイルを入れていきます。
アウターパイプは一番下まで下げておきます。
オイルを入れる時は、そっと入れてください。勢いよく入れて中に空気が多く入るとエア抜きが大変になります。
また、最後に油面を計測するので、規定量より少ない量から継ぎ足していく形がいいでしょう。
オイルを足すのは簡単ですが、抜くのは大変ですので。
オイルを入れたらダンパーロッドを「ゆっくり」ストロークさせて中の空気を抜きましょう。
最低10回。20回以上行って、また時間を置いてからストロークさせると尚良しです。
ストロークさせたあと、10分放置してください。
中のエアをしっかり抜くためにも、ここの作業は徹底して行ってください。
次に油面を計ります。
アウターパイプからの高さを計測しますが、私は写真のように定規でやりましたが、ここも専用の工具である油面調整ツールを使うのが吉でしょう。
油面の調整もかなり大変でした、、、
ちなみに定規を使う場合は、写真のようにどこまで油がついているかで確認します。
写真では分かりづらいですが、下に若干油がたまっているのと、実際に浸った場所は違ったりするのでよく見てチェックしてください。
フォーク組み立て
ここから組み立てに入ります。
スプリングを入れたらこのような感じにダンパーロッドが奥まった場所にあるのが見えると思います。
ここからの作業はこのダンパーロッドを引っ張りあげた状態で分解と逆の作業をしていかないといけないわけです。もう本当に大変です。
本当はダンパーロッドプーラー(ダンピングロッドツール)が必要なのですが、下調べをしっかりしておらず私の手元にはなかったので、気合で組み上げました・・・
自分でやるなら特殊工具はもう絶対に用意してください。
というかここの作業は、ダンパーロッドを引っ張りながらスプリングを縮めてロッドホルダーをかますので、一人じゃ基本無理な作業です。
フォークコンプレッサーが無いのであれば、二人でやりましょう。
最後はキャップボルトの取り付け位置についても規定に設定するために調節します。
車体への取り付け
後は分解するときと逆の手順で組み上げていくだけですが、各所ボルト類は規定トルクをしっかりと守りましょう。
というのも、倒立フォークのアウターパイプは材質が柔らかい金属であり高トルクで締め付けると歪みが生じフォークのストロークに影響が出るため、規定トルクは低めに設定されています。
確実に固定するためにも、固定部分はしっかり脱脂しておくのが吉でしょう。
まとめ:お店に頼むのが良いと思います
というわけで、以上が作業の解説になります。
ユーチューブにも色んな方が手順を動画撮影して投稿しているので、そういったものも含めてしっかりと情報収集すると良いと思います!
私自身が自分で行ったので、ただ作業をやるだけであれば自分でできないこともないですが、初めにも書いたように様々な点から個人でやるのはおすすめしない整備です。
- 各部を規定値に調整するためにサービスマニュアルは必須である
- 必要な特殊工具の数が非常に多い
- 特殊工具を揃えたら結局お店の工賃ぐらいになる
- 作業に最低二人欲しい
- エア抜きに経験と技術を要する
それでもどうしてもやってみたいという場合には私からはどうすることもできませんが、しっかり下調べをし、サービスマニュアルは熟読してから取り組んでください。
コメント